上目づかいでグルグル頭を回転させる聡。
こういう気を使う雰囲気って、苦手なんだよなぁ〜
でもこの雰囲気、誰だって気付くよなぁ? 気付いてて無視って、それも悪いのかなぁ〜?
「あのさぁ」
ボリボリと頭を掻きながら、躊躇いがちに聞いてみる。
「ひょっとして、喧嘩でもした?」
言ってみて、やっぱりお節介だったかと後悔する。
だが蔦は、別段機嫌を損ねる様子もない。ごまかしもしない。
「わからないんだ」
遠くに飛ばされた、半ば虚ろう視線とはあまりにも対照的な、はっきりとした断言的な言葉。
あまりにミスマッチで、故にしばらく絶句する。小さな目を、丸くする。
残暑の厳しい九月一日。項を撫でる風は暖かくて、気持ち良くはない。入学当時は届かなかった前髪。今は後ろで結ぶことができる。
だがサラリと風に遊ばれて、房になって落ちてきた。
「わからないんだよ」
大きく息を吐きながら、蔦はようやく聡を見上げた。
「最近、なんとなく避けられているような気がしてさ」
「避けられてる?」
聡の言葉に、小さく頷く。
「夏休みの後半からかな? 唐草ハウスへ言っても会えなかったり。と言うよりも、来ないでくれと言われるコトがあったりして」
「会いたくないってか?」
「いや、そういうふうに言われたコトはない。ただ、今日は忙しくなりそうだから会えそうにないとか、来てくれても待たせるだけだからって言われたりして」
今までにもそんな事を言われることはあった。だがここ最近は少し強引で、特に多いような気がする。
「会ってる時でも、なんとなくソワソワしてると言うか、妙に落ち着きがなかったりして。と思うと、会話の途中で急に黙りこんじまったり」
問いただしても、気のせいだと流される。
「俺に何か腹を立てているようなカンジじゃないんだ。それよりも―――」
その先を言おうとして、だが蔦は口をつぐんだ。
聡には、何も言えない。
言いたくないし、言われたくない言葉なのだと直感した。
学校は午前中で終わったため、陽は高く、遠くて暑い。
腹減ったな。
こんな状況で腹の具合を気にしちまうなんて、俺ってホント、情けない。
デリカシーの無さに呆れたところへ
クゥ〜
「あっ………」
慌てて腹を押さえ、気まずそうに見下ろす。蔦は笑った。
「悪いな。お前にこんな話しても、仕方ねぇってのにな」
「いや、いいんだ」
こんな話ができる相手は、そういない。
「こんな事、俺が言うのもなんだけどさっ」
雰囲気の重さに、またガリガリと頭を掻く。
「涼木に限って、そんな心配はないと思うぜ」
「根拠は?」
「…ねぇけど」
所詮は無責任な気休め。余計な口は出さない方が良いのかと後悔もしつつ、だが腑に落ちない。
あの涼木に限って、浮気などするだろうか?
もし、心変わりでもしてしまったのだとしたら?
人差し指を顎に当てる。
もし他に好きなヤツなんかができたとしたら、涼木だったらはっきり言う。聡にはそう思える。
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